ある施設のベンチのデザイン・設計の仕事を頂いた時の話。
お子さんが使うところなので撥水生地を提案することにしてサンプルを取り寄せた。
サンゲツとシンコール。
それぞれ考え方の違う機能性生地で個性があり、ものとしては甲乙つけがたい。
だがしかし……
サンゲツのサンプルは、厚みのある台紙にピンキングはさみできちんとカットされたサンプル生地が
しっかりとノリで貼り付けてある。
その台紙にはパンチで穴があけてあり、ファイルしやすくなっている。
一方のシンコール。
台紙は普通のコピー用紙でサンプルはザックリカットされほつれた糸がピラピラしている。
それがホチキスで留めてあるのだけれど、それがなんというか「やっつけ仕事感」がありありなのだ。
冒頭にも書いたように、機能としては甲乙つけがたく
ニーズ次第でどちらも選ばれる可能性はあった。
でも、どうにもサンゲツの生地のほうが良いような印象を持ってしまう。
二つのサンプルを提出したとき、お客様の表情も明らかにサンゲツのもの印象のほうが
良いように見受けられた。
そして、結果的にサンゲツのものが選ばれた。
もちろん色柄の好みや、機能とニーズのマッチングなどが大きい要素だ。
でも、手に取った時の印象も少なからず影響をしていたと感じられた。
翻って自分の仕事ぶり。
服装しかり、提出物の見やすさしかり、メールの文面しかり。
事務所の片付き具合しかり、ファイルの整理されっぷりしかり、自分への約束事しかり。
「提案がちゃんとしてるから」「仕事に全く支障がないから」「そういうところで判断する人ではないだろう」
ついつい自分へのハードルは低く見積もり、相手の自分を見る目を甘く見積もる。
重いハードルをよいしょ!と持ち上げるけれど、それは気を抜けば少しずつ下がってきていて
そうして、いつの間にか超えやすくなったハードルをヒラリと越えて満足してしまう……
カットサンプルを二つ並べ「そういうとこだぞ!」と反省をした、というお話。
コメントは停止中ですが、トラックバックとピンバックは受け付けています。